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債権法改正について(32)(相殺)

司法書士の岡川です。いつの間にか、今年も半年が終わろうとしています。債権法改正について、だらだらと更新してきたわけですが、このペースでは改正民法が施行されるまでに終わらない予感がしてきました。さて、相殺についても改正があります。まず、不法行為によって生じた債権を受働債権として相殺することはできない、というのは現行法における相殺の重要なルールのひとつです。この趣旨は、不法行為の被害者に、現実に弁済を受けさせることで被害回復を図るということと、相殺可能であることで不法行為を誘発することを防止するということが挙げられます。とはいえ、全ての場合において不法行為の被害者に現実に弁済を受けさせることが、必ずしも当事者間の公平を図ることにはなりません。また、過失による不法行為の場合、相殺不可だからといって誘発を防止する効果はあまり期待できません。そこで、改正法では少し対象が絞られ、相殺できないのは「悪意による不法行為」に限定されました(改正509条1号)。ここでいう「悪意」とは、「知っている」という意味での悪意ではなく、破産法における非免責債権の場合と同様、「積極的に害する意思」の意味です。過失による不法行為や、故意があっても害意がない不法行為による損害賠償債務を受働債権として相殺することができるようになるので、例えば、双方が被害を受けた物損事故による損害賠償請求について、相殺による処理が可能と

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