医療事故紛争解決事例シリーズ第15回、急性腹症の4例目です。
今回の患者は69歳の男性。
Aさんが腹痛と吐き気を覚えるようになったのは、日曜日の夕方のことでした。頻回にトイレに通うAさんに、家族は病院へ行くよう勧めましたが、生来健康で病院嫌いだったAさんはそれに応じませんでした。
しかし、腹痛は増強する一方で、午後8時頃、家族が再び病院への受診を勧めると、流石のAさんも今度はそれに応じ、タクシーで病院へ向かうことになりました。病院で受診を待つ間にも、Aさんは腹部膨満感を訴えてトイレに頻回に通いますが、この頃には尿もでない状態になっていました。
診療にあたったB医師が作成した診療録には、主訴として、下痢、腹痛、嘔気・嘔吐、現病歴として、「本日夕方から症状があり来院」、「嘔気(+)嘔吐頻回にあり」、「下痢(+)少しだけありました」、腹部理学的所見として、「腹部平坦・軟」、「腸蠕動運動亢進」、「右下腹部圧痛なし」といった内容が記載されています。Aさんには虫垂炎の手術歴があり、右下腹部にはその手術痕が残っていましたが、それに言及した部分はありません。診察に立ち会っていた奥さんによれば、B医師は、着衣の上から聴診器を軽く当てただけで急性胃腸炎と診断、「点滴すれば楽になるから、帰宅するように」と指示したといいます。
点滴を終えた後、Aさんの腹痛、吐き気、腹部膨満感といった症状は、
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